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営業で生成AIは何ができる?場面別の活用例と、実際に試したプロンプト
営業メール、提案資料の骨子、商談準備、ロープレ、日報。生成AIの活用で任せられることと、自分で確かめることを場面ごとに分けました。Claudeで試したプロンプトと出力つき。
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外回りから戻ると、机の上に残っているのはメールの返信、見積もり、提案資料、そして日報。会社が生成AIを使ってよいと言い始めたけれど、何に使えばいいのか分からない。試しに「営業メールを書いて」と打ってみたら、どこにでもありそうな文章が出てきて、そのまま閉じた。お客さまの情報を入れていいのかも分からない。
この記事は、そんな人に向けて書いています。
営業の仕事を5つの場面に分け、場面ごとに「生成AIに任せられること」「実際に試した結果」「気をつけること」を並べました。試したのは Anthropic の生成AI「Claude」です。架空の商材と会社を使ってプロンプトを入れました。
試したのは2026年10月3日で、モデルは Claude Opus 5.5 です。記事の狙いを伝えない別の会話で、プロンプトごとに新しい会話として入れました(ロープレだけは、続けて3回やりとりしています)。出力は手直しせずに載せ、太字や見出しの記号だけ外しています。
ほかの生成AIでは試していないので、同じ文章になるとは限りません。生成AIは同じプロンプトでも毎回少しずつ違う答えを返します。
先に答えを書くと、営業で生成AIが役に立つのは「下書き」「整理」「練習相手」です。事実の調べものと、最後の判断は人がやります。
よくある悩みの例。「使っていいと言われたけれど、何に使えば」
たとえば、こんな人を考えてみます(想定の例です)。
Aさん(想定)は32歳、法人向けの提案営業です。1日の外出は2件ほどで、残りの時間はメール、見積もり、提案資料、日報に消えていきます。社内で生成AIの利用が認められ、同僚の何人かは使っているらしい。それでもAさんは、出てきた定型文を見て「これなら自分で書いたほうが早い」と感じ、手が止まっています。
こう感じているのは、Aさんだけではないようです。総務省の令和8年版情報通信白書によると、生成AIを使っていない人に、テキスト生成AIを使わない理由を聞いた調査では、「自分の生活や業務に必要ない」が42.4%、「使い方がわからない」が38.8%でした。「使い方がわからない」は、調査した4か国のなかで日本が最も高い結果です(総務省)。
一方で、会社の仕事では使われ始めています。同じ白書の企業向け調査では、業務の種類ごとの活用状況として「議事録・メール作成補助」が約7割、「営業・販売」が約6割となっています(総務省)。
使えそうな場面はある。けれど、どこから手をつけるかが見えない。この記事では、その「どこから」を場面ごとに分けて見ていきます。
先に一覧で見る。任せられること、自分で確かめること
| 場面 | 生成AIに任せられること | 自分で確かめること |
|---|---|---|
| 営業メール | 聞いた話を入れた下書き、言い回しの候補 | 社名・日付・署名、相手との距離感 |
| 提案資料 | スライドの並び(骨子)、見出しの案 | 数字、自社商品の実際の機能、費用 |
| 商談準備 | 聞くことのリスト、出そうな反論の洗い出し | 相手の会社の事実(AIは知らない) |
| ロープレ | お客さま役、話し方の振り返り | 本物のお客さまの反応とは違うこと |
| 日報・商談メモ | 走り書きを決まった形に整える | 社外のAIに入れてよい情報か |
共通しているのは、AIに「材料」を渡して、形を整えてもらう使い方です。材料を渡していない事実(相手の会社の売上、担当者の名前、自社商品の正確な仕様)をAIに聞くと、もっともらしい間違いが混ざる恐れがあります。
場面1 営業メール。聞いた話を入れると、定型文から離れる
できること。 訪問のお礼、日程の打診、資料送付の連絡など、型のあるメールの下書きです。
先ほどのAさん(想定)が見たような定型文から離れるために、試したときは、商材、相手の立場、訪問で聞いたこと、次にしたいこと、文字数をまとめて渡しました。
試した結果(抜粋)。 架空のコーヒーマシンのレンタルで、初回訪問のお礼と次回日程の打診を頼みました。プロンプトには「社員が交代でコーヒーを入れている」「片付けが面倒という声がある」「決めるのは来月の部長会」と書いています。
社員の皆さまが交代でコーヒーを淹れていらっしゃること、片付けの手間を気にされる声があることなど、現場のご様子がよく分かりました。
来月の部長会でのご検討の材料として、お試しで1台設置していただく案とお見積もりをお持ちし、30分ほどでご説明できればと考えております。
(Claude の出力から抜粋。2026年10月3日)
訪問で聞いた3つ(交代で入れている、片付けの手間、来月の部長会)がそのまま文中に入ったので、定型文には見えにくくなりました。
気をつけること。 署名は「(会社名・氏名・連絡先)」と空けてあり、候補日も「〇月〇日(〇)」のままです。送る前に自分で埋めます。言い回しも、相手との距離に合わせて直します。お客さまの名前や連絡先を入れるかどうかは、後の「どの場面でも守ること」で触れる会社の決まりを先に確かめてください。
メールの種類ごとのプロンプトと実例は、営業メールのプロンプト例と頼み方にまとめています。
場面2 提案資料。いきなり本文を作らせず、骨子から
できること。 スライドの並び(骨子)と、各スライドの見出し案です。ヒアリングした相手の悩みを渡すと、「現状、課題、解決策、効果、費用、次の一歩」のような流れを組んでくれます。
試した結果(抜粋)。 架空の勤怠管理サービスを、従業員80名の製造業に提案する想定です。「本文や数字は作らない」「数字が必要な箇所は空けておく」と指示しました。
- 表紙:提案タイトル・御社名・提出日・自社名と担当者名
- 本日お伝えしたいこと:月末集計と打刻漏れ確認の負担を減らすための提案であることを一言で示す
- 現状の整理(ヒアリング内容):紙のタイムカードを月末に総務2名で手集計しており、丸2日かかっている流れを図で示す
(Claude の出力から抜粋。9枚分の骨子のうち3枚。2026年10月3日)
7枚目の「期待できる効果」、8枚目の「費用」、9枚目の「導入の進め方」は、数字を入れずに、「削減時間の試算根拠」「1名あたり月額×80名」「対象部署・人数」などを確かめるよう書かれた空欄になっていました。
数字をそれらしく埋めていないので、叩き台として使いやすい形です。
気をつけること。 今回は「数字は作らないで」と書いて頼みました。書かずに頼んだ場合は試していませんが、生成AIの答えには不正確な内容が含まれることがあると、個人情報保護委員会も注意を呼びかけています(個人情報保護委員会)。提案資料に根拠のない数字が入ると、お客さまの信用を失いかねません。自社商品の機能や料金も、AIは知りません。骨子をもらったら、中身は自社の資料で埋めます。
骨子の頼み方と、AIに作らせてはいけない所はChatGPTなど生成AIで提案資料・営業資料を作成するにまとめています。
場面3 商談準備。聞くことと、出そうな反論を先に並べる
できること。 初回の商談で聞く質問のリストと、お客さまから出そうな反論の洗い出しです。一人で考えると抜けやすい視点を補ってくれます。
試した結果(抜粋)。 架空の設計事務所(従業員30名)に、複合機の入れ替えを提案する想定です。「会社の実際の情報は分からないので、推測で事実を書かないで」と添えました。
今の複合機の契約状況:「リースは5年目と伺いましたが、満了の時期や、満了後どうされるかのご予定はありますか?」
出力するものの種類:「図面などの大きなサイズや、カラーでの出力はどのくらいありますか?」
(Claude の出力から抜粋。質問7つのうち2つ。2026年10月3日)
「設計事務所なら大きい図面を出すかもしれない」と業種から考えた質問が入っていました。AI自身も、これは仮説からの質問で、実際にあるかは分からないと書き添えています。反論への返し方は、「今の機械で特に困っていない」には「否定せず受け止め、満了時期に合わせて比較材料として持っておく価値がある、という位置づけで提案する」という方向性で返ってきました。
気をつけること。 相手の会社が本当に図面を出力しているかは、聞いてみないと分かりません。AIの質問リストは「聞く候補」で、相手の事実ではありません。返し方の言い回しは、自分の言葉に直して使います。
場面4 ロープレ。お客さま役をしてもらい、最後に振り返る
できること。 練習相手です。お客さまの立場、性格、困っていること(困っていないこと)を決めて渡すと、その役で返事をしてくれます。終わったら、お客さまの目線で振り返りももらえます。
試した結果(抜粋)。 「名刺管理に特に困っていない、忙しい総務課長」の役を頼みました(架空)。最初に「名刺の管理でお困りのことはありませんか?」と聞くと、こう返ってきました。
名刺ですか……うちはみんなそれぞれ自分で管理していて、特に困っているという話は聞いていないですね。正直、今日はバタバタしているので、要点だけ手短にお願いできますか。
聞き方を変えて、異動や退職のときの引き継ぎを尋ねると、お客さま役は「たまに『あの会社の連絡先どこだっけ』となることはありますけど、それで大きな問題になったことはないですよ」と答えました。すぐには話に乗ってこない、困っていない人らしい返事です。
「終了」と打つと、振り返りが返ってきます。直す点の1つめは、最初の聞き方についてでした。
最初から「2〜3分だけ」と短く区切り、今回の引き継ぎのような具体的な質問から入ると、もっと早く話に乗れたと思います。
(Claude の出力から抜粋。2026年10月3日)
2つめは、お客さま役がこぼした「たまに連絡先が分からなくなる」を拾って掘り下げられていない、という指摘でした。
気をつけること。 「たまに連絡先が分からなくなる」という話は、AIが役の中で作った設定です。本物のお客さまに同じ困りごとがあるとは限りません。ロープレは聞き方や切り返しを試す練習と割り切ります。「お客さまとしてだけ話す」「返事は2〜3文」と決めておいたら、お客さま役の返事はどちらも2文で、役から外れずに返ってきました。
役の作り方や、振り返りの頼み方は営業ロープレをAI相手に一人で練習するにまとめています。
場面5 日報・商談メモ。走り書きを決まった形に整える
できること。 移動中の走り書きを、上司に出す日報の形に整えることです。項目(訪問先、目的、結果、次の行動、相談したいこと)を指定すると、メモをそこへ振り分けてくれます。
試した結果(抜粋)。 架空の2社分のメモを渡し、「メモにないことは書き足さない。分からないところは(未記入)とする」と指示しました。
B社(架空)
- 訪問先:B社(電話)
- 目的:新規
- 結果:資料送付の了承を得た。担当者は来月まで忙しいとのこと
- 次の行動:(未記入)
- 相談したいこと:(未記入)
(Claude の出力から抜粋。2026年10月3日)
メモに書いていない「次の行動」を、AIが作らずに空けて返してきたので、自分が何を書き忘れたかも分かります。日報の最後には、資料をいつ送るかがメモに無いこと、値上げの資料の相談がA社の件かどうか分からないことを、確かめてほしい点として挙げていました。
気をつけること。 「書き足さない」の一文は、念のため毎回入れておくと安心です。AIが気を利かせて予定や結果を補うと、事実と違う日報になります。また、日報には社名、金額、お客さまの名前が入りがちです。社外の生成AIに入れてよい情報かどうかは、後の「どの場面でも守ること」で触れる会社の決まりを先に確かめてください。
営業リストは、AIに「会社の事実」を聞かない
営業リストづくりにも生成AIを使いたくなりますが、ここは注意が要ります。
試しに、架空の社名を挙げて「去年の売上高と、購買部の担当者の名前を教えて」と頼みました。このときの Claude は、架空の社名なので実在する情報はない、と答え、数字も人名も作りませんでした。代わりに、会社の公式サイトや有価証券報告書で確かめる方法を挙げています。
気になったのは、同じ答えの中の「それらしい数字や名前をこちらで作ることはできますが」という一文です。続けて、本物のデータと混ざるのでおすすめしない、と書いてはいました。とはいえ、頼み方しだいで、もっともらしい数字や名前は作れてしまうということです。
ただ、プロンプトに「架空の社名です」と書いていたので、知らないと答えやすい条件でした。いつもこうなるとは限りません。Anthropic も、Claude が誤った答えや誤解を招く答えを出すことがあると案内し、Claude をただ一つの情報源にしないよう呼びかけています(Claude ヘルプセンター)。
会社の数字や担当者名は、公式の情報で確かめます。AIに任せられるのは、自分で集めた情報を表の形に整える、業種ごとに分ける、といった整理の部分です。詳しくは営業リストづくりに生成AIを使うで扱う予定です。
どの場面でも守ること。入れる情報と、出てきた答え
入れる前に、会社の決まりと提供元の規約を確かめる
お客さまの名前、連絡先、取引の条件、社内の資料。営業の仕事は、外に出してはいけない情報だらけです。
個人情報保護委員会は、生成AIサービスに入れた個人情報が機械学習に使われることがあると注意を呼びかけています。会社として本人の同意なく個人データを含むプロンプトを入れる場合は、提供する事業者がそのデータを機械学習に使わないことなどを確かめるよう求めています(個人情報保護委員会)。
総務省と経済産業省の「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」も、AIを仕事で使う側の注意として、個人情報や機密情報を不適切に入力しないこと、提供者のサービス規約を守ることを挙げています(総務省)。
扱いはサービスやプランによって違います。たとえば Claude の個人向けプランでは、会話をモデルの改善に使ってよいかを利用者が設定で選びます。法人向けのプランには別の規定があります(Anthropic プライバシーセンター)。
実際に入れてよいかは、次の順で確かめます。
- 会社に生成AIの利用ルールがあるか。使ってよいサービスと、入れてはいけない情報は何か
- 使うサービスの利用規約とプライバシーポリシー(入れた内容が学習に使われるか)
- 会社の決まりで使ってよいと分かったうえで、それでも迷う情報は、名前を「A社」「担当者」に置き換え、金額を外して入れる
この記事で試したときは、すべて架空の商材と会社を使い、実在の名前や条件は入れていません。
出てきた答えは、確かめてから使う
先ほどの「AI事業者ガイドライン」では、AIの出力の精度とリスクを理解したうえで使うこと、出力を仕事に使うかどうかは責任をもって判断することを求めています。メールを送るのも、資料を出すのも自分です。AIの下書きは、送る前に必ず自分の目で読みます。
今日、最初に試すなら。日報かメールのどちらか1つ
全部の場面を一度に試す必要はありません。最初の1つは、毎日書いていて、間違えても取り返しやすいものが向いています。日報か、お礼や日程の打診のような型のあるメールです。
今回試したプロンプトに入れたものを分けると、次の4つになります(全部のプロンプトに4つそろっていたわけではありません)。
| 入れること | 例 |
|---|---|
| 役割 | あなたは法人営業のアシスタントです |
| 材料 | 聞いたこと、メモ、相手の立場(名前は伏せる) |
| 形と条件 | 250字前後、項目はこの5つ、日程の候補を3つ |
| 作らせないこと | メモにないことは書き足さない/数字は空けておく |
提案資料と日報で試したときは、4つめの「作らせないこと」で指示したとおり、数字や予定を埋めずに空欄で返ってきました。
ちゃんと学ぶなら
自分で試すだけでも、メールや日報なら始められます。一方で、提案資料の作り込みや、チームでの使い方まで広げたくなったら、体系立てて学ぶ方法もあります。
たとえば DMM 生成AI CAMP には営業コースがあり、公式サイトではリード情報の獲得から商談、受注、カスタマーサクセスまでを扱うと案内されています。無料セミナー(60分)の案内もあるので、続けて学ぶかはその後に決められます(2026年10月2日に公式サイトで確認)。
スクールを選ぶときに何を見ればよいかは、生成AIスクールの選び方にまとめています。
場面ごとの記事へ
- メールの文面を作りたい → 営業メールのプロンプト例と頼み方
- 提案資料の骨子を作りたい → ChatGPTなど生成AIで提案資料・営業資料を作成する
- 商談の練習をしたい → 営業ロープレをAI相手に一人で練習する
この記事で試した結果は、2026年10月3日に Claude(Anthropic)の Claude Opus 5.5 で、架空の商材と会社を使って得たものです。記事の狙いを伝えない別の会話で、プロンプトごとに新しい会話として試しました。生成AIは同じプロンプトでも毎回答えが変わり、サービスの機能や規約も更新されます。実際に使う前に、サービスの最新の案内を確かめてください。